帰納法を習得しよう!具体例と共に分かりやすく解説~1日でも早く見たかったブログ~
はじめに
どうも Junite です。
今回は、論理的推論の一つである帰納法を紹介していきたいと思います。
この記事は、帰納法について分かりやすく解説した後に、帰納法を習得するための方法を紹介する、という構成になっています。
帰納法とは
帰納法は、論理的推論の一つであり、前提条件と結論の二つの既存の事柄から、規則という未知の事柄を導くことを言います。
つまり、ある出来事Aがあって、もう一つの出来事Bがあったときに、AとBには何か関係があるのではないかと予想することです。
これだけでは分かりづらいと思うので、次の具体例とともにイメージを掴んでいきましょう。
ちなみに、論理的推論は、”演繹法”と”アブダクション”の他の二つと合わせて三種類に分類することが出来ます。
論理的推論については下ページで詳しく解説しています。
帰納法の具体例
では、ここからは帰納法の具体例を見ていきたいと思います。
具体例1
前提条件1:A君が学校に遅刻した
結論1:先生がA君に怒った
前提条件2:B君が学校に遅刻した
結論2:先生がB君に怒った
前提条件3:C君が学校に遅刻した
結論3:先生がC君に怒った
規則:学校に遅刻すると先生が怒る
誰かが遅刻すると毎回先生が怒ることから、「学校に遅刻すると先生が怒る」という規則があるのではないかと予想します。これが帰納法です。
具体例2
前提条件1:この前空に黒い雲が広がっていた
結論1:その後雨が降った
前提条件2:別の日の空に黒い雲が広がっていた
結論2:その後雨が降った
前提条件3:また別の日の空に黒い雲が広がっていた
結論3:その後雨が降った
規則:黒い雲が広がっているとその後雨が降る
空に黒い雲がある日はその後雨が降るという経験から、「黒い雲が広がっているとその後雨が降る」という規則があるのではないかと予想します。これも帰納法の一例です。
帰納法のイメージが掴めましたでしょうか。
帰納法の詳細
ここからは、帰納法についてより詳しく見ていきたいと思います。
身近で当たり前
帰納法という言葉を聞くだけだと、何か難しい概念のように思われたかもしれませんが、ここまでの説明からも分かるように、それ自体はすごく当たり前で、身近なものです。
実際、我々は日頃から様々なことを帰納法を用いて推論しています。上で挙げた具体例のような状況も、日常でよく見られる光景でしょう。帰納法という言葉自体は知らないだけで、無意識の内に既に使っているのです。
また、世の中の法則の多くは帰納法によって導き出されています。
例えば、物理法則は帰納法によって導き出されています。自然現象を大量に観察し、そこから正しいと思われる規則を導いているのです。
絶対に正しいとは限らない
帰納法で得られた規則は、絶対に正しいわけではありません。あくまでも、正しい確率が高いだけです。
具体例2では、「黒い雲が広がっているとその後雨が降る」という規則を導いていますが、これは現実には正しくありませんよね?黒い雲があっても、雨が降らないことはあります。
この性質は、帰納法は有限から無限への飛躍があることに由来します。
有限から無限への飛躍というのは、具体例2でいうと、有限(三つ)の「黒い雲が広がった後に雨が降った」という事例から、どんな場合でもそれが成り立つという無限の事例へと言及してしまうことです。
これは、得られた規則がどんなに正しそうな場合でも当てはまることです。
例えば、今までの経験から「太陽は回っている」という規則を導いたとしましょう。
これは一見すると正しいことのように思えますが、絶対に成り立つかと言われれば違います。地球の自転や公転が止まって、太陽が回らなくなる可能性もゼロではないのです。
なので、この規則を僕らが当たり前のように使っていいのは、例外が起きる可能性が限りなく低いので、それを無視しているからだと言えます。
このように、帰納法で得られた規則は、あくまでも蓋然的に正しいことに注意しましょう。
事例が多いほど信憑性が高い
前提条件と結論の事例が一つだけでも帰納法を用いることはできますが、それによって得られた規則の信憑性は低いものになります。ですが、たくさんの事例に帰納法を用いて得られた規則ほど、その信憑性は高いものとなります。これは確証性の原理とも言います。
具体例1で、D君やE君が遅刻した時も先生が怒れば、得られた規則の信憑性が上がることからも、イメージしやすいと思います。
また、全ての場合を網羅している場合を完全帰納法と言います。そうでない場合は不完全帰納法と言います。
完全帰納法は非常に稀なケースで、世の中の帰納法のほとんどは不完全帰納法です。
物理法則は不完全帰納法によって導き出されたので、ほぼすべて場合成り立ちますが、絶対に成り立つことは一切証明されていませんので、成り立たない場合の存在を否定できません。
それにもかかわらず、僕らが物理法則を使えるのは、学問上そうした細かいケースを想定していては議論が進まないので、物理法則は絶対に成り立つという前提を作っているからです。
帰納法の注意点
ここからは、帰納法を使う上での注意点について、お話ししていきたいと思います。
早すぎる一般化
早すぎる一般化とは、少ない事例から一般的な規則を導いてしまうことです。
具体例2では、たった三回の事例から「黒い雲が広がっているとその後雨が降る」という規則を導く、早すぎる一般化により、間違った規則を導いてしまったと言えます。
早すぎる一般化をして得た規則は、正しい可能性もなくはないのですが、多くの場合は上の例ように間違ったものになってしまいます。
これは、得られた規則を断定ではなく推量の形にすることで、規則自体にその蓋然性を明示させることによって、対策出来ます。
上の例でいえば、得た規則を「黒い雲が広がっているとその後雨が降るかもしれない」とすることによって、あくまでも可能性が高いことにすぎないことが分かりやすくなり、正しい規則を得ることができるのです。
偏ったサンプリング
上の早すぎる一般化は、元となる事例が少ないことから誤った規則を導いてしまいましたが、多くの事例を参照していたとしても、その事例に偏りがあることによって、適切な規則を得られないことがあります。
例えば、街頭でタピオカが好きかをアンケートをした時に、9割以上の人が好きと答えたとしましょう。
しかし、ここで「タピオカが日本で非常に人気である」という結論を導くのは正しくない可能性があります。
もし、アンケートをしたのがちょうど学校終わりの時間帯で、アンケートに答えた人の多くが高校生だったとしましょう。
すると、タピオカが人気なのは高校生の間だけで、他の世代の人たちには全く人気がない可能性があります。つまり、「タピオカが日本で非常に人気である」という規則が成り立つかはまだ分からないのです。
このように、 帰納法で規則を得る際は、その元となる事例に偏りがないかを注意する必要があります。
帰納法を習得するメリット
前述したように、我々は既に帰納法を自然と使用しています。ここでの”習得”とは、何を”前提条件”と”結論”にして、何を”規則”として導いたのか自覚するということです。
つまり、帰納法を意識的に使えるようになるということです。
帰納法を習得することのメリットはいくつかあります。
自分の思考を可視化できる
一つ目は、自分の思考を可視化できるということです。
今まで、頭の中でぼんやりと考えていたことを、「自分は帰納法をしている」と意識して考えることで、何をどのように導き出したかが明確になります。
間違いの原因に気づきやすい
二つ目は、間違えた時にどこが間違っているのかを分析しやすいということです。
帰納法を使用して得た規則が間違っているならば、その原因を、早すぎる一般化や偏ったサンプリング、推量の形になっていないなどにすぐ特定することが出来ます。
もし、帰納法を習得していなければ、その間違いの原因の特定をすぐにするのは難しいでしょう。
何が正しいのか判断しやすい
三つ目は、何が正しいのか判断しやすいということです。
帰納法を習得していれば、ある情報を得たときに、それが帰納法によって導かれたものだとしたら、その妥当性や信憑性を冷静に判断することが出来ます。
例えば、友達の何人かに数学のテストの成績を聞いたところ、40点前後だと答えました。そして、帰納法を用いて「今回の数学のテストの平均点は40点前後である」という規則を導いたとしましょう。
この時、帰納法を習得していれば、早すぎる一般化をしていないか、サンプリングが適切に行われているか、などを考えることができます。
この場合は、友達にしか聞いていないことから、成績が似たもの同士がかたまっている可能性が高いので、「実際の平均点は違う可能性が高い」と客観的にその整合性を判断することができます。
帰納法の習得方法
帰納法を習得するメリットを確認してきたところで、ここからは、帰納法を習得する方法についてお話していきたいと思います。
何が帰納法かを確認する
帰納法を習得するためにはまず、自分の思考を一つ一つ確認し、何が帰納法で、何がそうでないかを認識することが大切です。
そうすることで、帰納法のイメージを深めることができると同時に、帰納法がいかに頻繁に用いられているかを再確認することができます。
この後、練習問題を用意しているので、チャレンジしてみてください。
要素を分析する
何が帰納法かを認識した後は、何が前提条件で、結論で、規則なのかを確認してみましょう。
そうすることで、自分がどのような思考をしているのかを理解することができます。
これも、練習問題を用意しているので、チャレンジしてみてください。
得られた規則を疑う
最後に、日頃から帰納法で得られた規則を疑うようにしましょう。
今まで見てきたように、帰納法は推論の過程で、様々な間違いを導く可能性があります。
また、演繹法では、帰納法で導かれた規則を使うことが多いのですが、その規則が間違っていると、どんなにその過程が正しくても、得られる結論は間違ったものになってしまいます。
なので、”帰納法の注意点”で挙げたことを確認することによって、得られた規則の妥当性を分析することが非常に大切です。
これも、練習問題を用意しているので、チャレンジしてみてください。
帰納法の練習問題
問題1
以下の推論のうち、帰納法であるものを全て選びなさい。
推論1:時計を見ると11時を指していた。そろそろ寝なければ。
推論2:朝スマートフォンを見ると、メール通知が来ていた。友達からだろうか。
推論3:私の経験から言わせてもらうと、あの人が笑ってる時は実は怒っている。
推論4:友達を作るのが下手だ。話すのが苦手だからに違いない。
問題2
次の帰納法における前提条件、規則、結論をそれぞれ述べなさい。
「通勤のために駅へ行くと、いつもより人が混んでいた。人身事故があったのだ。次からは気を付けてあらかじめ調べておこう。」
問題3
次の帰納法で得られた規則の妥当性を調べなさい。
「新宿駅周辺で、中学生に塾に行っているかアンケートをとったところ、90%以上が塾に行っていると答えた。最近は早い段階で子供を塾に行かせる家庭が増えているようだ。」
解答・解説
問題1
答えは推論3です。
推論1は演繹法。前提条件「時間が11時」と規則「夜遅いと寝た方がいい」から結論「寝た方がいい」を導いています。
推論2はアブダクション。規則「友達からメールが来ると通知が来る」と結論「通知が来た」から前提条件「友達からメールが来た」を導いています。
推論3は帰納法。前提条件「あの人が笑っている」と結論「その時怒っている」の事例が複数あって、そこから規則「あの人が笑っている時は実は怒っている」を導いています。
推論4はアブダクション。規則「話すのが下手だと友達が出来ない」と結論「友達が出来ない」から、前提条件「話すのが下手」を導いています。ただし、規則が本当に正しいのかというのは、また別のお話です。
問題2
正解は前提条件が「人身事故が起きる」、結論が「いつもより人が混む」、規則が「人身事故が起きるといつもより人が混む」です。
たった一つの事例から規則を導いてしまっているので、規則の妥当性については別で議論をした方がいいですね。
問題3
正解は妥当ではないです。
新宿には塾が多数存在するので、アンケートに答えた中学生の多くが、その新宿の塾に行く途中であった可能性が高く、その場合、偏ったサンプリングとなり、得られた規則の妥当性を著しく下げることになります。
ちなみに、アンケート調査では、そのような偏りをゼロにするのが望ましいですが、完全に偏りをなくすことは現実的ではないため、どの程度までは許容できるかの線引きが重要になります。
おわりに
最後までありがとうございました。
ぜひとも日頃から意識的に使って、帰納法を習得してみましょう!
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